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韓国に誓約書を提出したら日本の国籍はどうなる? ― 韓国の国籍選択と日本の11条2項の国籍自動喪失規定について

更新日:6月24日




日本のように韓国にも複数国籍者(注1)には国籍選択制度があります。韓国の制度は、以前は期日までに選択(外国籍の放棄の証明を持って韓国籍を選ぶ)しなければ、韓国籍を自動的に失ってしまう規定でしたが、2010年の法改正で、国内で外国籍を行使しないという誓約書を提出すれば外国籍保持が認められる(注2)ことになりました。これが「韓国も重国籍容認になった」と日本でいわれている理由です。(ただし韓国人が外国籍を取得したり、外国人が韓国に帰化したりする際には例外を除いて原国籍の放棄が義務づけられています。)

 

注1 韓国で言う「複数国籍者」には、いわゆる狭義の遠征出産による外国籍取得者は含まれません。

注2 外国国籍不行使誓約ができるのは、基本国籍選択期間(満22歳前)内の複数国籍者と兵役を履行した複数国籍者です。


大韓民国国籍法

 第12条(複数国籍者の国籍選択義務)
満20歳に達する前に複数国籍者となった者は、満22歳に達する前に、満20歳に達した以後に複数国籍者となった者は、その時から2年以内に、第13条及び第14条の規定によりいずれかの国籍を選択しなければならない。ただし、第10条第2項の規定により、法務部長官に大韓民国において外国の国籍を行使しないことを誓約した複数国籍者は、この限りでない。
第13条(大韓民国の国籍の選択手続)
① 複数国籍者で第12条第1項本文に規定された期間内に大韓民国の国籍を選択しようとする者は、外国の国籍を放棄し、又は法務部長官が定めるところにより、大韓民国において外国の国籍を行使しないことを誓約し、法務部長官に大韓民国の国籍を選択する意思を届け出ることができる

ここには「大韓民国の国籍の選択手続」とか「大韓民国の国籍を選択する意思を届け出る」というような表現があり、またこの外国国籍不行使誓約書を提出する際には国籍選択申告書も一緒に提出する必要があります。

 

日本の国籍法第11条2項に

 

「外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。」

 

という条項があるので、韓国に国籍選択申告書と外国国籍不行使誓約書を提出すると、日本のこの規定にあたり日本国籍を自動喪失することになるのではないかと心配されている方も多いことと思います。

 

国籍法専門の弁護士の方によれば、この日本の規定は、日本の国籍選択制度と同じような制度を持つ国の国籍選択をした場合に適用される、と解釈されるとのことで、日本の国籍選択届にあるような「日本(その当該国)の国籍を選択し、外国籍を放棄します。」という届出用紙があったとして、それに署名をして当該国に提出した場合には日本国籍を喪失すると解釈されるそうです。

 

しかし、韓国の第10条2項(注3)は、「韓国内では外国籍を行使しないという誓約」いわば、外国籍を保持したい(放棄したくない)、との誓約ですから、日本の11条2項には当たらないということになるようです。また在大韓民国日本国大使館の国籍選択の届出のページにも、11条1項についての記載はありますが、韓国に誓約書を提出することにより11条2項で国籍が喪失されるとの記載はありません。


また、日弁連が公開した「わかりやすい国籍法Q&A」詳細版 p27, A17(5) の部分に日本国籍法11条2項についての記述があります。

 

さらに日本の国籍選択については、日本の法務省からは20歳までに国籍選択をすることという呼びかけがなされていますが、実際の外国籍放棄は義務付けられていません。

上記に挙げた在大韓民国日本国大使館の国籍選択の届出のページにも

「【注】現在、韓国は、日本への国籍選択の届出だけでは韓国国籍を放棄・離脱したとは認めておりません。」

という記述もあります。


また、最近(2024年5月)東京法務局国籍課に電話で問い合わせた方から下記の回答があったとの報告がありました。

 

質問:

私の子供は生まれながらの二重国籍者(日本・韓国)ですが韓国国籍法・第12条1項に従って外国籍不行使誓約を提出した場合、日本国籍法・第11条2項によって日本国籍を喪失しますか?

外国籍不行使誓約は国籍選択申告書と一緒に提出する必要があるため気になっています。

 

回答:

今年2024年3月にも同様の問い合わせがあり、その時の記録が残っています。

記録には以下のようになっています。

 韓国国籍と日本国籍を有する重国籍者が韓国国籍法の第13条第1項により外国籍不行使誓約をして、韓国国籍を選択したとしても日本国籍法第11条第2項により日本国籍は喪失しない。

 

法務局は、個人でのメールや電話での問い合わせにはこのように回答を出してくれますが、詳しい法律的な説明もなく法務局としての公式な見解なのかも確認が難しいです。「オーストラリア国籍の出生届」の記事の戸籍時報の法務局からの「答」として解釈が確認されるような公開された資料をご存知の方は当会までお知らせいただけるととてもありがたいです。

 

 

(注3)

大韓民国国籍法
第10条(国籍取得者の外国国籍の放棄義務)
①    大韓民国の国籍を取得した外国人で外国の国籍を有している者は、大韓民国の国籍を取得した日から 1 年以内にその外国の国籍を放棄しなければならない。
② 第 1 項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、大韓民国の国籍を取得した日から 1 年以内に外国の国籍を放棄し、又は法務部長官が定めるところにより法務部長官に大韓民国で外国の国籍を行使しないことを誓約しなければならない。


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